睡眠と受験勉強

 

・睡眠不足による弊害

定期試験前、あるいは受験本番が近づくと、睡眠時間を削って勉強する高校生も多いかと思います。その心意気はよいのですが、実はこれはもったいないことです。なぜなら、睡眠をとることは受験勉強においてとても大切なことなのです。睡眠不足は勉強の成果に深刻な影響を与えます。睡眠不足の日が続くと、明らかに記憶力や認知能力が低下します。睡眠時間が2時間不足している車のドライバーは、事故を起こすリスクが倍増するというデータもあるほどです。また、睡眠不足によって集中力や学習意力が低下し、精神的に不安定になるという報告もなされています。

最近では、毎日の睡眠が足りないことによって上記のような心身に深刻なマイナス要因が積み重なっていくことを「睡眠負債」と呼ぶようになり、このことが様々なメディアで特集されるようになりました。それによると、睡眠負債が蓄積されると、生活習慣病やアルツハイマー型認知症を引き起こす原因にもなりうるというのですから、睡眠不足でよいことなど一つもありません。睡眠は人間の三代欲求の一つに数えられていることから、私たちにとってとても大切なものであることを再認識できますよね。

 

・睡眠の機能

それでは、睡眠は私たちにとってどのような役割を果たしているのでしょうか。睡眠の役割はいくつかあるといわれていますが、ここでは受験生にとって大切な役割を三つ紹介しましょう。

一つは心身の疲れをとるためです。激しく体を動かした日や考え事をした日に、よく眠れた経験を持つ人は多いでしょう。この「心身」には脳も含まれます。勉強をして疲労した脳を休めて疲れをとることで、次の日の勉強の効率を高めることができます。

二つ目は記憶を整理するためです。嫌な出来事があったけど、一晩寝たらなんとなくスッキリしたという経験はありませんか? これは睡眠中に記憶が整理され、必要に応じて記憶が消去されているからです。睡眠中に脳が「嫌なことを覚えていても心身にメリットがない」と判断し、消去されているということなのです。さらに、脳が覚えておかなければいけないと判断したことはは睡眠によって定着し、むしろ記憶が強化されるということも分かっています。これは受験生にとって重要なポイントではないでしょうか。

三つ目は成長ホルモンを始めとする様々なホルモンを分泌することです。これにより疲れにくく健康な体をつくることです。普段あまり意識しないかもしれませんが、受験勉強は健康な体があってこそできるものです。健康という観点からも、睡眠時間を確保することは重要なことなのです。

 

・睡眠時間を削っちゃダメ

以上のことから、受験生にとって睡眠は勉強と同じくらい大切だということが分かりました。受験勉強は大事ですが、睡眠時間を削っても全くよいことがないどころか、上記に挙げたようにデメリットばかりなのです。受験生のみなさんは「睡眠時間を削っちゃダメ!」と心得てください。

 

・高校生に必要な睡眠時間はどれくらい?

睡眠の大切さが分かったところで、次に「じゃあ、どれくらい寝たらいいの?」という疑問が浮かぶでしょう。みなさんの中には、少ない睡眠時間でも活発に活動できる人もいれば、一定の睡眠時間を確保しないとダメという人もいますよね。そのことから分かるように、ベストの睡眠時間は人によって違います。しかし、高校生にとってベストの睡眠時間は存在するという見解があります。

アメリカで120人の高校生を対象に睡眠時間と成績の関係を調べた研究結果があります。それによると、睡眠時間が7時間半と比較的長く、また就寝時刻が10時半と早い生徒ほど成績がよいことが分かりました。

もう一つ、アメリカ睡眠財団が睡眠の専門家を集めて作成した推奨睡眠時間というものがあります。それによると、ティーンエイジャーは8〜10時間の睡眠が必要とされています。アメリカの研究結果ではありますが、体が成長し学業に励まなければいけない時期であることには変わりないので、参考にすべきデータであるといえるでしょう。

 

・眠りを浅くしない方法=睡眠の質を上げる方法

上記のデータから、高校生には少なくとも7時間半の睡眠が必要と考えられます。でもみなさん、こう思いますよね? 「無理!」と。確かに、高校生がやるべきことは勉強だけではありません。一日の中では通学時間は削れないし、授業中に寝るわけにもいかない。放課後は部活もあるし、時には友達と遊びたい。そんな中で勉強時間を確保して、さらに7時間半以上の睡眠なんて無理無理……。なるほど、その気持ちはよくわかります。

それでは、考えを少し変えてみましょう。睡眠時間をこれ以上確保するのが難しいのであれば、睡眠の質を上げればよいのです。睡眠の質を上げることによって、睡眠時間が少なくても睡眠不足によって起こる睡眠負債を解消することができるといわれています。また、睡眠の質を上げられれば、同時に日中の勉強の効率を上げることが期待できます。

それでは、睡眠の質はどうやって上げればよいのでしょうか。睡眠の質を上げる方法は、入眠して最初の90分のノンレム睡眠(脳も体も眠っており、記憶の整理が活発に行われている睡眠)を深く眠ることです。これができると、成長ホルモンがたくさん分泌され、疲れがとれやすくなったり肌がツヤツヤになったりしますし、目覚める際にすっきりと目覚められるといわれています。

それでは、最初のノンレム睡眠を深く眠るためにはどんなことをすればよいのでしょうか。そのためには、「体温」と「脳のスイッチ」の二つがカギとなります。

まず、体温についてみていきましょう。眠る前の人の体温は、一度上がってから下がります。この体温変化が起こると、スムーズに入眠できるのです。これは、眠る前に一度体温を上げて体の深部体温を解放し、眠りにつきやすくしてから体温を下げて眠るという仕組みなのです。

この体温のメリハリをつける方法は、お風呂に入ること。温度40度のお風呂に15分入ると深部体温が0.5度上がります。深部体温は上がった分下がろうとする働きがありますので、入浴によって体温を上げることはとても大切です。お風呂に入らないと体温が緩やかにしか下がらないので、入眠するまでに時間がかかってしまい、効率的な睡眠とはいえなくなります。また、寝る直前にお風呂に入っても体温が下がるのに時間がかかるので寝つきが悪くなってしまいます。受験生の皆さんは、入眠の90分前までに入浴をすませられるようにするとよいでしょう。

もう一つの脳のスイッチとは、寝る前に脳を単調な状態に鳴らして入眠スイッチをオンしやすい環境をつくることです。皆さんは図書館や長時間の移動など、刺激の少ない単調な環境で眠くなってしまったという経験はありませんか? 刺激の少ない単調な環境では脳に刺激がないので、考えることをしなくなり、眠くなってしまうのです。これを利用し、寝る前には徐々に刺激の少ない環境を整えることが大切なのです。具体的には、繁華街など光の刺激の強いところ行くのを避ける、テレビやパソコン、スマートフォンを見るのを控えることがポイントです。どうしても何か娯楽的なものを見たいということであれば、短編小説やエッセイなどがよいでしょう(ミステリーなど刺激が強いものは眠れなくなってしまいますので、要注意です!)。

 

・昼寝も場合によっては有効

とはいっても、睡眠時間が確保できなかったり、よく眠れなかったりして日中に眠くて仕方ないということはありますよね。また、そうでなくてもなんとなく集中できなくて勉強が手につかないということもあるでしょう。

そんな状態の解決法として、昼寝が有効的です。寝ることによって体や脳の疲れをとり、リフレッシュさせることができます。起きたときには頭がスッキリして再び勉強に集中することができます。昼寝の時間は、15分から20分、どんなに多くても30分を超えないようにしましょう。それ以上寝てしまうと深く眠ってしまい、夜の睡眠に悪影響を与えてしまいます。また、15時以降に昼寝をすると体内時計が乱れ、これも夜に眠れなくなってしまいますので気をつけましょう。

よい昼寝のためには15時より前に20分程度寝ることを心がけましょう。とはいえ、短時間眠ってシャキッと起きるのはなかなか大変なものです。そんな時にはコーヒーを飲むとよいでしょう。コーヒーに含まれる眠気さましの作用を持つ成分カフェインは、摂取後15分後から効果を発揮します。そのため、昼寝前にコーヒーを飲むと、スッキリ目覚められるといわれていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

・寝る直前に暗記科目をやるとよい

先ほど、寝た瞬間からの90分はノンレム睡眠という状態であり、記憶の整理が活発に行われていると書きました。この時間帯には、記憶の整理が行われ、必要な記憶は脳の記憶を司る海馬に定着させるということが行われています。ここでまた、受験生に耳寄りな情報があります。眠る直前に30分ほど暗記科目をすると、脳の仕組みをうまく活用して効率的に勉強ができるのです。

また、記憶と睡眠時間の関係でいうと、睡眠時間が少ないと記憶が脳に定着しにくいといわれています。記憶を脳にしっかりと定着させるためには、6時間以上の睡眠時間が必要だといわれています。暗記というポイントにしぼってみても、やはり睡眠時間を確保することは大切なのですね。

 

以上のことから、受験生にとって睡眠時間がとても大切なものだということが分かったでしょうか。忙しい生活の中、睡眠時間を確保するのはなかなか大変ですが、短い睡眠時間でも睡眠の質を高めることによって、日中の勉強の質を高めることは可能です。

そのために、日中にできることはたくさんあります。みなさんはぜひ、睡眠を味方につけて勉強に励み、受験を成功させてください。